■You gotta mail:3
オカルトクラブの会合を終え、冬樹が家に戻ると、夕食の支度をしているはずの姉がいない。
「あれ……」
「……ゅきどの、冬樹どの」
「え、あ、軍曹?」
声の方を見ると、地球人スーツのケロロが窓の外からこちらを伺っている。
窓を開けるとキョロキョロと室内を見回した。
「夏美殿は不在でありますか?」
「うん、どこ行ったんだろ」
「とにかくいないなら、早速このMGジムスナイパーを作るであります!」
窓から上がり込んで廊下に出たところに、夏美が立っていた。
「キィヤァァ!!夏美殿、いたんでありますか!?」
「ボケ…ガエル」
「トイレ掃除はこれからやるので勘弁であります!…あれ?」
夏美は騒ぐケロロの脇をすり抜け、階段を昇って行った。
「ねーちゃん」
「冬樹、悪いけど当番代わって」
「いいけど……」
ドアの閉まる音がするまで、冬樹とケロロはじっと階段を見つめていた。
「しかし、さっきのは何だったんでありましょうか」
独り言を言っていると、冷蔵庫が開き、中からギロロが現れた。
「あ、ギロロ、なんか夏美殿がね」
「夏美はどこだ」
「ゲ、ゲロォ」
あまりの迫力に、パーツを切っていた手が止まる。
「な、夏美殿ならご自分の部屋でありますが」
「そうか」
「あ、ギロロ、それ」
ケロロは去っていくギロロの手にあるものに目を留めたが、
ギロロは振り返らずに行ってしまった。
「あんなもの、何に使うんでありますか?」
その時、耳元で通信スイッチが入った。
「たいちょ〜」
「ゲロ?クルル曹長でありますか?」
「ラボに来な、面白いもん見せてやるぜぇ」
「さては今までの変なこと全部……」
陰気な笑い声だけが聞こえ、通信は一方的に切れた。
「これは詳細を聞かずにいられないであります。ゲロゲロリ」
作りかけのガンプラも放り出して、ケロロは冷蔵庫に頭から飛び込んだ。
夏美の部屋の前に立ち、ギロロは深呼吸の後、ノックをして声をかけた。
「夏美、話しがある」
しばしの沈黙の後、扉が突然開いた。
「あ、ごめんギロロ、突然いなくなって心配した?」
ちょっと困ったような笑顔と軽い口調に面食らった。
「なんかさ、ちょっとびっくりしちゃって」
「あ、ああ」
「あんたも大人の男なんだもんね、子供くらいいてもおかしくないわよね、
あは、ははは……」
言いながら、夏美の表情が曇っていった。
なんとかしなければ。本能的に思ったギロロは口を開く。
「夏美、違う、誤解だ」
「なにが誤解よ…いいわよ隠さなくたって。
大体ね、こんな大事なことも話してもらえないような関係だったの?私達!?」
「あれはクルルが嘘を……」
「あんなそっくりな子供見せられて、疑う余地ないわよ!」
「あれは…あれは俺だ!」
「わかってるわよ、あんたの子でしょ!」
「違う、俺自身なんだ!あれは俺のガキの頃の写真をが見つけたといって、
母親が送って来たんだ!」
夏美は一瞬ひるんだが、ぷいっと背中を向けると、ベッドまで歩いて勢い良く腰を下ろして
足を組む。
「そんな言い訳にだまされるもんですか」
「そう言うと思ったぞ」
ギロロは手元に一丁の銃を取り出し、銃口を自身のこめかみに当てた。
「ギロロ!それ!」
「お前に信じてもらえないなら、こうするしかあるまい!」
「やめて!!」
夏美の叫びも虚しく、ギロロは引き金を引いてしまった。