■Thousand wave:3


青く輝く地球を眼下に、ギロロを載せた船は漆黒の宇宙を漂っていた。
計器の動作を確認し、通信回線を開く。

「こちらスカル1、指定の位置に到着した」
『ワカバ1、スター1、スタンバイおっけーであります!』
『ダート1、もとより』
『こっちはもーちょいかかりそうだ。時間稼ぎ頼むぜ〜』
「了解」

ギロロは頭の中で作戦概要を反芻した。

宇宙テロ組織、オールドブルーの船は高速で地球へ接近中。
奴らの船を破壊するか、ミサイルを破壊するのがギロロのミッションだ。

万が一失敗すれば、成層圏のすぐ下でケロロとタママが待機している。

最悪それで取り逃がしても、地上にはドロロがいる。
敵が直接基地に攻めて来ることも考え、地上待機し、
最悪の場合はロケットで上空まで飛んで迎撃する手筈だ。

まさかとは思うが、それでもダメな場合は、今クルルが全力で急いでいる
プログラムが作動することになるのだが……。

レーダーが作動し、ギロロはそこで考えるのをやめた。

『こちらスカル1、敵影を補足。出るぞ!』
『ミサイル以外の大した装備は無いはずだ。頼むぜぇ、センパイ』
『誰に言っている』

ギロロは操縦桿を握ると、敵影の方角へ機首を向けて発進した。



敵機が射程に入ると、レーダーに表示されたマークが赤く光った。

「当たれよ……」

操縦桿の頭についたカバーを弾いて、赤いボタンを押す。

レーザー砲がまっすぐに飛び、正面に爆発のような光りが見えた。

「やったか!?」

アクセルを全開にして背後に回り込むように近づくが、急に飛んできたビームに機体を翻した。

「ちぃっ、まだ動けるのか」

小型の宇宙艇は左翼に穴が空いているが、ふらつきながらもギロロをまこうと、
ビーム砲を撒き散らしながら必死に飛んでいた。

どう見ても2〜3人乗りだが、コバンザメのように機体の下部に付いたガス弾は、
機体と同じくらいの凶悪な大きさだ。

「あんなデカブツ……落とさせはせん!」

久しぶりの戦闘。
鼓動の速さは緊張感のためか高揚感のためか、ギロロ自身にもわからなかった。

敵機を地球とは逆向きに追い詰め、後ろに回り込んだまま、ガス弾に狙いをつけてボタンを押す。

その瞬間だった。
ガス弾が機体から離れ、地球とは逆方向へ落ちてゆく。

「なにっ!?」

レーザーは機体と弾頭が分離した間を虚しく通り過ぎた。

「ばかな、これではガスを捨てたようなもの……」

それとも自身の命を優先したのか。
ガス弾に気を取られ、敵機から視線を外した瞬間、衝撃と爆発音で操縦席が大きく揺れた。

「しまった!」

弾頭を捨てて軽くなった敵に、一瞬にして後ろへ回り込まれたようだ。
モニターには損傷部分が赤く光って表示されている。

幸いにもかすった程度で済んだようだ。
ギロロは敵影をレーダーで追いながら、ガス弾のバーニアが点火し、方向転換するのを横目で見た。

「誘導システム搭載型か!?」

ガス弾へ向かってビームを打つが、背後からの攻撃を避けなければならず、
無傷のまま一直線に地球へ向かう影を見送るしかなかった。

もはや点となった弾頭から目を引きはがし、背後の小型艇を追い込むために機体をひねる。

頭を過ぎるのは、愛する者の笑顔だった。

「くそっ……夏美!」

ギロロは自分に舌打ちしながら、後衛に知らせるため通信回線を開いた。


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