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「毎回懲りないこったぜぇ」

薄暗いラボの冷たい床に、夏美とギロロが仲良く倒れて気を失っていた。
ヘッドフォンに電波発信用のアンテナをしまうと、そこへ物陰から緑の頭が覗く。

「終わったようでありますな」

緑はあるのかないのかわからない耳の穴から耳栓を引き抜くと、俺が笑いながら
赤いのを足で小突くのを、手をかざして止めた。

「学習しねぇ奴らだぜ」
「あんたが毎回記憶消しちゃうんだから仕方ないでしょー」
「消せって命令出してんのはあんただろ」
「……ゲロ、だってぇクルル〜」
「さわんなよ」

すがり付くケロロから逃げると、俺はラボを出た。

「ちょっと、どこ行くんでありますか」
「ヤボ用。それ片付けとけよ〜」
「0時には出発だかんね!準備含めて早く帰ってきてよ!」

ったく、世話の焼ける隊長だぜ。
俺はソーサーで日向家を飛び出した。向かう先は西澤タワーだ。
サブローは一足先に着いていたらしい。手摺りに座ってぼけっと夜景を眺めていた。
並んで俺も手摺りに座る。

「遅かったじゃん」
「モテる男は遅れて来るんだよ」
「あの二人に手間取ったんだ?」
「あいつら、今回はラボに直接攻めてきやがった。
 モニターで高見の見物決め込んでた隊長なんかビビりまくってたぜ〜」

思わずいつもの笑い声がこぼれた。

「ふぅん、前までは基地で終わってたんだろ?何回目?」
「3、いや4回目じゃね」
「えー、俺たちそんな何回も記憶消されてんの?」

サブローはうんざりした声で言う。

「でも、記憶を消されても、毎回同じ結論に至るって、面白いね」
「単細胞だからな」
「それがあの二人の必然なんだよ。俺もそんな相手見つけたいな」
「ケッ、くだらね」

サブローはそんな俺を横目で見て笑った。

「ところで、今回は帰って来るの?」
「そんなのわかんねーよ」
「毎回そう言ってるじゃん」
「……覚えてんのかよ」
「消されるの、慣れちゃったのかもね。免疫できたかな」
「そういうもんじゃねぇだろ」
「うん、でも人間の脳をナメてたら痛い目に遭うかもよ」

俺は視線を街に戻して舌打ちをした。

「そうかもな、お前みたいのもいるしな」
「ていうかクルルさ、むしろわざと……」

サブローは言いかけたが、俺の視線を感じて口をつぐんだ。
そして突然大声で笑い出す。

「地球のゲームでドラクエって知ってる?」
「RPGだろ?名前ぐらいは知ってるぜ」
「あれってね、死ぬと貯めた金が半分になるんだよ。敵は身ぐるみ剥がないで、
 半分だけ返してあげるんだ」
「……何が言いてーんだよ」

ずいぶん楽しそうに笑う奴だ。俺は顔をしかめた。

「夏美ちゃんとギロロにとっては、クルルがラスボスなのかな」
「俺は半分も返してやらねーよ」

パズルのピースのひとかけらでいい。それを足掛かりにして、どれだけやるのか
見てやるのが面白いんじゃねーか。

口にださなくても、サブローにはわかったらしい。

「クルル、相変わらず性格悪いなぁ」
「ほめるなよ」

俺達は手摺りの上で笑い合った。


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