■素直に握手:3
夜も更け、海で遊んで疲れた面々はそれぞれの家へ帰って行った。
夏美は明かりも付けず、一人ベッドに横たわり、ため息をついた。
「あーあ、せっかくサブロー先輩に会えたのに、着替えてる間にどっか行っちゃうし」
それに……と夏美は呟いて、体をころりと横に倒す。
(あいつ……なにも別々で帰らなくてもいいじゃない)
家に帰ると、冬樹が夏美に全てを聞かせたのだった。
「……と、言うわけなんだ。姉ちゃん、わかってくれた?」
「……なにが」
「伍長が悪くないってこと」
「夏美殿、拙者からもお許し願うでござる」
「あ、ドロロいたの?」
またまた涙目になるドロロを置いて、冬樹は続けた。
「本当は姉ちゃんだってもうわかってるくせに」
「知らないわよ、あんなエロダルマ」
「夏美殿、先程冬樹殿が言ったように、あの時すべての照明を打ち落としたのは、
拙者ではなくギロロ殿でござるよ。」
夏美は腕を組んだまま横を向いて黙り込んでいる。
冬樹の言う通り、あれがギロロの仕業というのは、あの時の銃声でわかっていた。
しかし、冬樹にあんな格好をさせたと聞いて、頭に血が昇ってしまったのだ。
「だって、冬樹にあんな……」
「確かに嫌だったけど、それも姉ちゃんのためだったんだよ」
「そうかもしれないけど、もっと他の方法もあったはずよ」
「そうかなぁ」
「とにかく!私は冬樹が嫌な思いをしたのが嫌だったの!」
それだけ言って自室に戻ってしまった。
しかし夏美は、時々ベランダへ出て、ギロロのテントの様子を確認しては
戻ることを繰り返していた。
冬樹がお風呂から出て、隣の部屋に入った気配がする。
ギロロはまだ戻らないようだった。
(あいつ、どこ行ったのかしら……)
考えているうちに眠ってしまっていた夏美は、控えめに叩かれる窓の音に目を覚ました。
「夏美」
(ギ……ロロ?)
夢うつつで名を読んでから飛び起きる。
ベランダにギロロが月の光を浴びて立っていた。