■Present for you:3
「暑かったけど、いい買い物ができたわね」
「あ、あぁ」
幸せな時間も終わりが近づいている。
俺が下を向いて歩いていると、風とともに、鈴の音が聞こえた気がした。
立ち止まって顔を上げると、夏美も同じように耳を澄ましている。
「あ、あれね」
夏美は一件の店に歩いていった。店先には、ガラスでできた丸い物体が幾つも下げられている。
風が吹くと、それらが一斉に涼しげな音をたてた。
夏美はその中で、水色の地に赤とピンクの魚が泳いでいる絵柄の物を手に取った。
俺が黙って見ていると、それを買って俺に差し出す。
「はい、ギロロ。あんたに」
「お、俺!?」
思いもよらないことに、大声を出してしまう。
目の前のそれを、うやうやしく両手で受け取った。
「今日のこと、嬉しかったから。お礼。あんたいつも庭で暑そうじゃない?」
「なんだ、これは」
「あぁ、わかんないか。風鈴って言ってね、暑い時、この音を聞いて涼しさを楽しむのよ」
「音を聞くと、体感気温が下がるのか?」
「そういうことじゃないわよ、気分の問題!いらなきゃいいけど」
「いるいるいる!いります」
慌てて体の後ろにそれを隠した。
夏美は苦笑する。
「こっちの方が安くて申し訳ないけど、一応、これの借りは返したからね」
そう言って、手に持った紙袋を持ち上げて見せた。
「……充分すぎる礼だ」
「え?」
俺はほかの荷物を持ち直し、風鈴とやらの丸い包み紙をしっかりと抱えた。
「お前がそこまで言うなら、貰ってやる」
歩き出す俺の背中に、夏美のつぶやきが聞こえた。
「かわいくないんだから」
俺はさらに赤くなり、それを悟られないよう、足早に歩いた。
日向家の近くまで来ると、いつもと違う状況に、二人とも同時に感づいた。
門まであと100mといったところで、目を見合わせて同時に駆け出す。
「な、なによこれ!」
日向家のあった場所に、巨大な黄色いドームが出来ていた。夕日に照らされて、
ちょうどこんがり焼けたきつね色に見える。
そのてっぺんに、あいつがいた。
「ケロロ!貴様!」
「ゲーロゲロゲロ!遅いでありますよ、ギロロ伍長!」
「ボケガエル!なによこれ、早く元に戻しなさい!」
仁王立ちしたケロロは逆光で表情が見えなかったが、間違いなくニヤリと笑っていた。
「夏美殿ったらオロポコ〜!(愚かなりポコペン人の略)
侵略兵器の材料を買いに行かされているとも知らず!」
「あんたたち、だましたのね!」
「ケロロ、どういうことだ、これがなくても完成したというのか!?」
俺が買ってきた物の袋を掲げると、どこかのスピーカーから声がした。
「オッサンがあんまりにも遅いんで、俺様がアリモノで代用したぜぇ。
ただし、代用できなかったモノもあるがな〜」
ドームの一部が蓋のように開いて、中からマジックハンドが出てきた。