■Keron Mermaid -500voices-:8
(夏美!)
入口に立つ夏美にギロロが駆け寄った。
夏美はその場にしゃがんでギロロを迎えた。
「さっきはごめん」
微笑んで言った夏美に、全力で首を振る。
「ちょっと泣いたら頭スッキリしたわ。守ってくれたのに、ひどいこと言っちゃった」
ギロロはさらに首を振ると、何度かためらってから、その手を夏美の額に当てた。
「大丈夫、もうかなり下がったの。今度は私があんたを助けるわ。やらせて、ギロロ」
額に当てた手の平からはまだ熱を感じる。
まっすぐな瞳に見つめられ、ギロロの瞳が揺れた。
「まだ熱あんだろ?そんな奴に自分の命、任せて大丈夫なのかよ、先輩」
クルルの声に後押しされるように、ギロロは夏美の手を取ると、それを自分の胸に導いた。
夏美はその手の平をギロロのしっとりとした肌に押し当てる。
二人の視線が交わり、ギロロは頷いた。
(俺の命、お前に預けよう)
「……ありがと、ギロロ」
夏美はそっと手を離し、拳を握って立ち上がった。
「セリフは『夏美』に変更よ!」
モニターのアスラー星人に向かって叫ぶ。
「あら……あんた、夢で会った子じゃない」
「ええ、昨夜は世話になったわね」
「私の夢に呼び込まれた人間は、かなり体力を消耗するはずよ。
普段から鍛えている軍人なら別でしょうけど、あんた相当キツそうね。」
「余計なお世話よ!」
「まぁいいわ、セリフは『夏美』に変えてあげる。せいぜい頑張りなさい」
アスラー星人がまた足をわずかに動かすと、足元の玉が一瞬光を放ち、沈黙した。
ケロロが試しに足元の玉を拾うと、ギロロではない声が夏美の名を呼んだ。
「夏美殿、ギロロ伍長は我が小隊の大事な機動歩兵。我々も全力でサポートするでありますよ」
「かなりの数だぜ、心してかかりな」
「ありがと、ボケガエル、クルル」
夏美は頷いて、自分も足元の玉を拾い上げた。