■Keron Mermaid -500voices-:5
モニターが切り替わり、手配書らしき物が映った。
ギロロの表情が強張ったのを見て、クルルが笑う。
「ビンゴだな。こいつは指名手配中のアスラー星人。
容疑は一応強盗傷害だが、こいつが盗むのは生きた人の声だ。
詳しくはわかってないが、相手の脳波から夢に侵入するのが手口らしい」
「イカみたいなおばさんでありますな」
ケロロの呑気な様子をよそに、クルルはキーを叩きつづける。
「やっぱりあったぜ。ギロロ先輩に深夜、不明の先から通信が入ってやがる」
「じゃ、それでギロロの声を?」
「おそらく間違いねえな。この通信元を辿れれば、犯人に行き着くはずだぜ」
「おぉ!さっすが黄色くん!」
「その必要はないよープププ」
割り込むように通信が入った。今度はトロロだ。
「とっくにこっちで突き止めてるしぃ。気づくの遅くない?」
「……うるせぇんだよクソガキ」
クルルが顔をひきつらせると、代わりにタルルが画面に現れた。
「すみません、それで今、そいつを捕まえてきたっス」
「早っ!」
驚いてケロロはあごを落とした。
画面上では、アスラー星人がゾルルの爪で脅されている。
ギロロが夢で見たよりかなり小型のようだ。
胴体部分はケロン人より一回り大きい程度だったが、
あいにくその体は自分の足で拘束されている。
ガルルは最後に残った足を2本を両手に持ち、片足をアスラー星人の体にかけて、
力一杯締め上げていた。
「ぎゃああぁぁ!やめてぇっ」
アスラー星人のだみ声が基地に響く。
「と、いうわけっス。今トロロにお二人の声を戻す方法を調べさせてるっス」
「何か方法があるんでありますか?」
「今のところわからないんで、尋問と平行して調査中っス」
タルルの喋る間にも、アスラー星人の叫びが絶えない。
「と、とりあえず我々は、調査結果を待つであります」
急いで通信を切ると、ケロロは大きなため息をついた。
横の椅子に座るギロロを横目で見る。
「ガルル中尉ったら、昔ギロロが上級生に虐められた時と同じ顔してたでありますよ」
ギロロは腕を組んで目を閉じると、やれやれといった様子で首を振った。
クルルが愉しそうに笑う。
「絞め殺しちまいそうな勢いだったなぁ〜。
あんな小悪党、この世から消えても、誰も困らねぇけど」
「そんなことになったらギロロの声はどうなるんでありますか!」
「俺様も色々と調べてやってるから安心しな」
「んじゃ、とりあえず待ちってヤツでありますか」
ギロロはため息をつくと席を立った。
「どったの?ギロロ」
問いかけるケロロに、人差し指で天井を指した。
「ああ、夏美殿の様子を見てきてくれるでありますか。よろしくであります」
ケロロの微笑みに見送られ、ギロロは足早に基地から出て行った。