■休憩室でコーヒーを:3
その日の夜、訓練を終えて自室に戻った私はベッドの上で膝を抱えていた。
ギロロ伍長にはあの後会えることもなく、中隊長の話が異動の件だったのかもわからない。
しかし、おそらく間違いはないだろう。
(このままでいいんでありますか)
軍曹の言葉が思い出される。良いも悪いも、どうしたらいいのか、
自分に何ができるのかもわからない。
軍曹はとにかく自分に任せろと言っていたが、あの笑い声には何故か嫌な予感がする。
「、お客さんだよ」
物思いにふけっていると、同室の者に声をかけられた。こんな夜に誰だろうか、
不審に思いながら廊下に出ると、緑色の背中が月を見ていた。
「軍曹……?」
「ちょっといいでありますか」
「はい、なんでしょうか」
私がそう答えたところで、軍曹は脇をすり抜け、たった今私が出てきたドアを開いた。
すると小さな叫びと共に、部屋にいた同室の仲間が飛び出してきた。
「あ、ええと、はは……」
同僚は慌てて立ち上がると、愛想笑いをしながら部屋に戻る。
「場所を変えるであります。殿、お酒はいけるほう?」
「はぁ、人並みには」
「じゃあちょっとつきあってよ」
軍曹は言うなり踵を返した。私は慌ててその背中を追いかける。
「もうすぐ消灯時間ですが」
「いーじゃんいーじゃん、明日非番っしょ?」
「……なぜそれを」
「イロイロとリサーチさせて頂いたでありますよ」
ニヤリとした後、急に真顔に戻ると立ち止まり、こちらへ向き直った。
「ギロロ、ペコポン行きが決まったそうであります」
顔から血の気が引くのがわかった。軍曹はそんな私を見て、表情を和らげる。
「とにかく、そのことで相談があるでありますよ。一緒に来てくれる?」
私は頷いて、後に続いた。