■休憩室でコーヒーを:2
私の所属するケロン軍第二中隊も、先日大規模な侵略作戦で遠征から帰ったばかりだった。
久しぶりに戦闘がありそうだと身を引き締めていたが、先行部隊が既にほぼ侵略済みだったらしい。
我々は抵抗を受けないまま、各地の制圧を小隊に分かれて行った。
今回のために助っ人で呼ばれていたギロロ伍長も、相当な肩透かしを喰らったようだ。
テーブル席に移った我々は、伍長のぐちを聞くことになった。
「あれじゃ、何のために俺が呼ばれたのか分からん」
「いーじゃん、楽に終わったんだからさ。羨ましいであります」
「お前の方はどうだったんだ」
「我輩は先行工作部隊だったから、ちまちまとめんどくさいことばっかりやらされちゃってさ〜」
「ふん、貴様にはそれくらいが丁度良い。放っておくといつもすぐにサボるからな」
「そんなことないであります!」
目の前でぎゃあぎゃあやり合う二人を見て笑っていると、ギロロ伍長に通信が入った。
何度か相槌を打つと、トレーを持って立ち上がる。
「中隊長に呼ばれた。行ってくる」
伍長は表情を無くしていた。作戦が終わった今、中隊長の呼び出しは任務完了を意味するに等しい。
私が何も言えないままでいると、伍長は口を開きかけ、また閉じて背を向けた。
「んじゃね、ギロロ」
軍曹の呼びかけにも、片手を挙げただけで去っていく。
私は喉に詰まっていた息を吐き出した。
「上等兵」
「はい」
軍曹は私だけに聞こえるような、ごく小さい声で話しかけてきた。
「ギロロのこと、いいでありますか」
「いい、とは」
「このままだと奴は次の作戦に行ってしまうでありますよ」
私は内心どきりとしながら、声を震わせないように気を配った。
「作戦が終わった以上、補充人員であった伍長が次の任務に向かわれるのは、当然のことです」
「……ぶっちゃけたこと、聞いてもいい?」
「? どうぞ」
「ギロロとどこまでいってんの?」
「ど、どこまでとは」
「だーかーらー、どういう関係?」
あまりに直球な質問で、すぐには答えが出なかった。そして改めて考えてみる。
私とギロロ伍長。この関係は何?
無言の私に軍曹が目を細めて言った。
「答えにくい関係でありますか」
「いえ!……自分にも、わからないんです」
深夜に二人きりで話した夜、あれをきっかけに何度か話すうち、私は自分の気持ちに確信を持っていた。
これは、恋というやつだ。
「わからないって、殿はギロロのこと、好きなんでありましょう?」
「な!?い、いや、私は」
「見てればわかるであります」
元々赤い顔がさらに赤くなるのがわかり、私は俯いた。
軍曹は腕を組んで言う。
「まーったくあのバカ、きっと気づいていないであります」
気づかれていては困るのだが、軍曹はまるで自分のことのようにぷりぷりと怒っていた。
「ここは一つ、殿の為に、我輩が一肌脱ぐしかないでありますな」
ゲロゲロリという笑い声を聞きながら、私は自分の背中に汗が伝うのを感じていた。