■休憩室でコーヒーを:1
穏やかな朝の日差しで、道端にある植え込みの朝露がきらきらと光っていた。
私は最近の習慣である朝のランニングを終え、ベンチで一息付いたところだ。
他にも何人か、ランニングコースで汗を流している。その中に目当ての人物がいた。
手に持ったドリンクのストローをくわえながら、その走る姿を眺める。
汗が目に入るのか、しきりに拭っているのが見える。だんだんこちらに近づいてくると、
私のほうを一瞥した。
その瞬間。
「んなぁっ」
突然足をもつれさせ、盛大に転んで倒れた。
「ギロロ伍長!?」
私はドリンクをほうり出して駆け寄っていた。すると伍長はすぐに起き上がらず、
顔だけ上げて駆け寄った私を見上げる。
「上等兵!」
「はっ」
「匍匐(ほふく)前進用意!」
「え、あ、あ?はい!」
慌てて隣に伏せると、既にもう赤い尻は先の方に見える。
「ケロン軍人たるもの、転んでもただでは起きるなよ!」
(やっぱり転んだんだ……)
咄嗟に従ってしまったが、周囲の視線が痛い。
そっと立ち上がると砂を払い、小走りに赤い背中を追った。
朝食のために入った食堂で、すでに奥のカウンターに座る後ろ姿を見つけた。
周囲には人がおらず、外の畑のみずみずしい緑に、深い赤がはっきりと映えてい
る。私も、あんなふうに見えるのだろうか。
自分もトレーを手に、近づいて声をかけた瞬間、呼び声が重なった。
「ギロロ伍長」
「ギ〜ロロっ」
声の方を見ると、真ん丸な黒目がこちらを見ていた。
「ケロロ!?お前、いつ帰ったんだ!」
「ほんのついさっきでありますよ。あんまり長い遠征で、我輩疲れちゃった〜」
緑のケロン人は親しげに話しかけ、伍長の左隣に座った。私が話し掛けないまま、
伍長の一つ空けて右側に座ろうとしたのを見て、大きな黒目がこちらをいたずらっぽく光る。
「キミも一緒に食べるでありますよ。ギロロー、こちらはどちらさま?」
「上等兵だ。今俺がいる第二中隊の仲間だ。上等兵、こいつは……」
「ケロロ軍曹であります!ギロロとは幼なじみってヤツ?」
「くされ縁だ」
「失礼でありますよ!とにかくよろしくであります、上等兵どの!」
ケロロ軍曹は私ににっこり笑いかけた後、笑顔の種類をダークに変えて伍長を突いた。
「ギロロもなかなか隅に置けないじゃーん、いつの間にこんな美人と仲良しになったんでありますか」
「バ、馬鹿!そんなんじゃない!上等兵に失礼だぞ!」
「んじゃ我輩が仲良くなっちゃおっかな。ねー、殿!」
伍長は赤くなって怒っている。私はなんだかおかしくなって、吹き出してしまった。