■Ringing the bell:5


ドロロは鞘を払うと刃を水平にして斬激を受けた。二つの刃が交わり、火花が飛んだ。

「無用な戦いはしたくないでござる!」
「そう言わずに付き合え、実戦訓練だ!」

ギロロは力任せにサーベルを押した。
ドロロは一瞬それを堪えると、左側へ受け流してそのまま刃を右へ凪いだ。
とっさに身を引いてそれをかわし、後ろに跳びながらライフルを転送する。

「ギロロ殿!」

叫びながら塀に向かって走ったドロロの足跡に、銃弾が土を跳ね上げる。
ドロロはそのまま壁を垂直に蹴ってギロロに飛び掛かった。

紙一重でそれを避けると、ギロロはその横顔にサーベルを振り下ろした。

しかしその刃が切り裂いたのは頭から垂らされた布地のみ。
ドロロは体勢を崩しながら攻撃を避けると同時にクナイを投げていた。
それらは胸元のバックルとライフルを握る左手を襲った。

「ぐっ」

クナイが当たり、ライフルを取り落とす。
と同時にバックルが開き、中身がひらりと地面に落ちた。

「これは……」

ドロロの目に入ったのは夏美の笑顔。

緊迫した雰囲気が消えて、ギロロはビームサーベルを手放した。

「相変わらず強いな、お前は」

そう言うと、ばつが悪そうに写真を拾った。
バックルに戻そうとしたが、留め具が壊れてしまったようで閉まらなかった。
仕方なく、写真を手に持ったまま言う。

「すまなかった。八つ当たりだ」

ドロロの口布の下で微笑の気配がして、刀が納められた。

「その写真……。大切に思っているんだね」

また幼い頃の口調に戻っている。
二人の間に風が吹き抜け、風鈴が涼しげな音をたてた。

ギロロは自分がいつになく素直な気持ちになっていくのを感じた。
その場に座りこみ、写真を見つめる。

「本当は、あいつのしたいようにさせてやりたいんだ」
「だったら、どうして」
「万が一、それであいつが傷つくようなことがあれば、俺は止めなかった自分を許せない」
「……ギロロ君」

その時、ガラリと音を立てて窓が開いた。
ドロロとギロロの間に、ケロロが割り込んできた。

「もうドンパチ終わったでありますか」
「隊長殿」
「ケロロ、お前気づいていたのか」

ギロロは写真を慌てて背中に隠したが、ケロロはちらりと目を向けただけだった。

「窓の外で戦闘が始まれば気付かないほうが変でしょ。
 ま、訓練って声が聞こえたから顔出さなかったけど」

日和見主義の隊長に、二人は揃って苦笑する。

「とりあえず、緊急訓練を行った理由は?ギロロ伍長」
「……」
「拙者が手合わせをお願いしたのでござる」

言い淀んだギロロの代わりにドロロが答えた。
すぐにギロロが口を挟む。

「違う、これは俺が」
「いいや、拙者が」
「あーもう、どっちでもいいであります。それよりもう少しで夏美殿も帰って来るはず。
 ギロロはそれ、直しといたほうがいいでありますよ」

指を刺されてギロロは胸元のバックルを押さえた。


前のページ    次のページ

G66×723 に戻る
NOVEL に戻る
TOPに戻る