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■Beauty & Invador:4
(なんだろ、これ……前にもこんなこと、あったような)
「大丈夫ですか、夏美さん……」
「小雪ちゃん!」
我に返った夏美は、呆然と見つめていた手を握りしめると、自らの胸をかばうように腕を交差させた。
顎を引いて階段上の緑を睨みつける。
「なんなのよあんたたち!」
寄り添う二人を余所に、まだ階段上にいた緑と黒は、額を寄せて小声で話をしていた。
「やっぱ女で間違いなさそでありますな」
「ギロロ先輩を一発KOなんて、ただ者じゃないですぅ」
「い、いやしかし、どちらにせよ相手が女性なら、我々の目的には不要であります。
なんとかして追い返さねば……」
そして目を細め、タママと呼ばれた相手をじっと見た。
「ぼ、ぼ、僕は無理ですよぅ!あんな狂暴なの!」
「なぁに、突撃兵なんだからダイジョブダイジョブ!」
「う、うう……うわぁん!行くですぅ!」
上司の笑顔に堪えられず、一歩踏み出したところへ、さらに上の方から声がかかった。
「待ってケロロさん、タマちゃん!」
「桃華お嬢様、いけません」
黒服の執事を引き連れ、階段の先の通路から走って来たのは、華美なドレスを着た少女だった。
銀髪のショートカットに、ラベンダー色のドレスが良く似合っている。
「村の者に顔を見られては、後で厄介です」
「良いのです、ポール。……そこの貴女。もしかして、弟さんがいらっしゃいませんか?」
「え、ええ」
「お名前は」
「冬樹……だけど」
それを聞いた少女の頬が、透き通る白から朱に染まった。
「やっぱり!冬樹くんのお姉様ですのね!面影がありますわ」
「冬樹を知ってるの?」
「ええ、あれは何年か前……」
しかし、桃華の話は突然降ってきた黒い影に遮られた。
頭上にあったきらびやかなシャンデリアから白い綱が伸びて、夏美の手足を瞬時に絡めとっていた。
「いやぁ!今度はなに~?」
「スキあり!であります!昔話は後でいくらでもしてもらえるでありますよ!」
「くっ、夏美さん!」
今度こそ弓矢を番えた小雪だったが、その喉元には短刀が突き付けられていた。
「いつの間に……!」
「申し訳ないでござる」
青い影が小雪の背に取り付いていた。
「じゃあ軍曹さん、ぼくがこの女たちをつまみ出してくるです!」
「ノノノ……タママ二等、作戦変更でありますよ」
怪訝な顔をする部下に向かって人差し指を立てると、ケロロは少女たちに向かって叫んだ。
「そこの娘、弟がいるんでありましょう?」
「い、いるけど、冬樹をどうするつもり!?」
「ゲ~ロゲロゲロ!そんなのはこっちの問題であります!
そこの狩人女、今から貴様を放してやるから、村からこいつの弟を連れて来るであります!
でないとこの女を帰さないでありますよ~。ゲロゲロ」
「小雪ちゃん!ダメ!」
夏美はもがくが、縄は外れる気配がなかった。
小雪はとっさに夏美に近づくと、耳元で囁いた。
「とりあえずここは退いて、村のみなさんを呼んで助けに来ます」
夏美はうるんだ瞳で頷いた。
それに強く頷き返して、小雪は壇上に向かって叫んだ。
「わかった! 私が冬樹さんを連れてきます」
「じゃ、そーゆーことで。桃華殿も、異論無いでありますな」
「私は……冬樹くん、なら……」
桃華は両手を頬に当てると、赤い顔で俯いた。
「んじゃドロロ、森の出口まで案内して~」
「御意」
ドロロは瞬時に小雪の背から離れると、背後の扉を開け、先に出て行った。
小雪は夏美を振り返り、もう一度強く頷くと、ドロロの背を追って闇に消えて行った。
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