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■Beauty & Invador:3


夏美と小雪の二人は、やがて背丈の倍はあろうかという鉄の門扉の前に辿り着いた。
今は無残にも錆が浮き、茨や蔦がからまっているが、良く見れば繊細な装飾がされてある。
小雪が試しに軽く押すと、その外見からは信じられないくらいに音も無く開いた。

二人は顔を見合わせたが、頷きあうと門の中に足を踏み入れた。

その先には、茨の海が広がっていた。左右には小さな噴水らしきものもあるが、とっくに水は枯れている様子だ。
ちょうどその真ん中に、人一人が通れるくらいに踏み締められた小路があるようだった。
そしてその向こう側、そびえ立つ城に見入った。

城のほうは、多少の茨や蔦が絡まっているものの、月明かりに白い肌を照らされて、清廉な佇まいを見せていた。
しかし壁に時折開いた小窓には、明かりは見られない。

「こんな城が、本当にあったなんて」

「冬樹の話じゃ、呪われた古城って感じだったけど、庭はともかくお城は綺麗ね」

「誰か住んでいるんでしょうか」

「うーん……明かりは見えないけど」

「どうしますか?」

「このままじゃ帰り道もわからないし。とりあえず、行ってみましょ」


二人は揃って大きな扉へと歩きだした。



二人はノックに返事が無いのを見て視線を交わすと、体重をかけて扉を押し開いた。
扉の軋む音が真っ暗なホールに響いた。

「こんばんは……」

「ごめんくださーい!だれかいませんかー!」

ホールには赤い絨毯が敷かれていた。
それを踏み、おずおずと中に入った瞬間、二人の背後で扉が閉まった。

「なに!?」

「ゲ~ロゲロゲロ!おとなしくするであります!」

その声を合図にしたかのように、周囲が突然光に包まれた。
どうやらホール中の明かりが点されたようだ。

「何者!?」

目が眩んだまま、小雪が背中の弓を取ろうとすると、その手に背後から飛んできた石つぶてが当たった。

「痛っ」

「しばらく大人しくしていて欲しいでござる」

「えっ……」

その声の主を視認できないまま、正面の階段上から笑い声が降ってきた。
ようやく目が慣れてきた二人には信じられないことに、
そこには仁王立ちのカエルが3匹ほど踏ん反り返っていた。

「貴様らのどちらかが、この城に残って暮らすであります!そうすればこの城は侵略基地として……」

「ぐ、軍曹さん」

「なんでありますかタママ二等、今いいとこなんだからっ」

「こいつら、両方女かも……」

「女ぁ?だからどーした……ってゲロ~!?」

隣に立っていた黒いカエルに耳打ちされて、緑が叫んだ。
黒と対象に立っていた赤が舌打ちする。

「おいタママ、お前の報告じゃ、村の狩人と少年という話だっただろう」

「だ、だって、服は男みたいだし、フードかぶってるし、遠目じゃわからなかったですぅ」

「女じゃ意味が無い。俺が確かめてやる!」

赤いカエルは、うろたえる仲間を尻目に豪奢な階段を駆け降りた。
それは夏美の足元で止まると、膝くらいの位置から睨んで来た。

「本当に女か?フードを取って顔を見せろ」

「な、なんなのよあんたたち!」

「答えないなら確認させてもらう!」

夏美が何か言う前に、赤い物体が飛び上がった。
夏美のフードに両手を伸ばす。

「ひっ!」

驚いた夏美が大きくのけぞったせいで、行き場を失った赤い手は空を掻いたかと思うと、
そこにあった夏美の両胸をしっかりと捕らえていた。

「な……に……!このふくらみは……」

「っきゃあああぁぁぁ!!」

「んぐぁっ」

力任せに横っ面を張られ、吹っ飛ばされた赤い塊はホールの壁に叩きつけられた。

その瞬間、吹っ飛ばされたカエル……ギロロの脳裏に、稲妻が走った。

(なんだ、これは)

何か大切なことを忘れている気がする。

身を起こすと、激突した壁に寄り掛かりながら、ギロロは高鳴る鼓動の苦しさに、思わず胸に手を当てた。

(この、胸の苦しさはなんなんだ。あの女、一体……)

顔を上げて夏美を見れば、ギロロと同じように呆然とした顔で、たった今振りぬいた右手を見つめていた。


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