■Detective G66:5


一方、ギロロと夏美を置いて一足先に戻ったケロロは、キッチンから流れて来る
スパイシーな香りに声を上げた。

「おー、今日はカレーでありますか」
「軍曹、早くしないと冷めちゃうよ」

エプロン姿で腕を捲った冬樹も、ちょうど食卓に着くところだった。
ケロロも椅子に飛び乗って、スプーンを握る。

「今日は冬樹殿の特製カレーでありますか!いっただっきまーすであります!」
「そういえば、ねえちゃんは?」
「夏美殿なら赤ダルマと庭にいるでありますよ」

先程のことを思い出したのか、「赤ダルマ」のところで眉を怒らせながらスプーンを口に運ぶと、
一口食べたとたん、怒り眉がへにょっと下がった。

「ゲロ〜、冬樹殿、今日のカレーは激甘でありますな。コーン入ってるし」

口の中で甘味のあるコーンがしゃきしゃきと跳ねた。
冬樹も口を動かしながら微笑んだ。

「うん、ごめんね。でも、こういうお子様カレーもたまに食べるとおいしくない?」
「うーん、たまにはいいかも〜」

ケロロが口を動かしていると、窓を開けて夏美が入ってきた。

「あー、お腹すいた。冬樹、やっとできたの?」
「先に食べてるよ。伍長と一緒じゃなかったの?」
「なんか調べるとかで、クルルのとこ行ったわ。いただきまーす!……んっ」

夏美も一口食べて違和感に気付いたようだ。

「なにこれ?全く辛くないじゃなーい。カレーは中辛が好きなのに」
「ごめんよねえちゃん、すぐ出来るのがこれしか無くてさ」
「まぁまぁ夏美殿、これはこれで美味でありますよ」
「別にいいけど。もうすぐごはんって言ったのに用意してなかったり、冬樹、今日変よ」
「だから、僕そんなこと言ってないってば」
「言ったじゃない!」
「言ってない!」

睨み合う二人を交互に見てから、ケロロは笑顔を作った。

「お二人とも〜、なにがあったか分かんないけど、きっと何かの誤解でありますよ」
「あんたは黙ってて!」

夏美はケロロに冷たく言い放った。

「ゲロ〜……」
「そんな言い方したらかわいそうじゃないか。ねぇ軍曹、聞いてよ」

冬樹はそう言うと、自分たちの喧嘩の原因を話し始めた。

一通り聞いたところで、ケロロはにやりと笑った。

「夏美殿と冬樹殿の証言の違い……デジカメ……そしてこの甘口カレー!
 我輩の灰色の脳細胞が答えを導き出したであります!」
「へ?どうしたの軍曹」
「あっ、あんたまさか!のぞき犯がわかったの!?」
「早速証拠を集めてギロロのところへ向かうであります!」

ケロロはスプーンを放り出すと、カレーを残したままドアの方へ駆け出して行った……
が、すぐにUターンして席に着く。

「やっぱり温かいうちに食べちゃうであります!」
「なんなのよ!」
「夏美殿には、食べながら今回のことについてご説明するでありますよ」

夏美はその言葉を聞いて、眉根を寄せながらも、ほっと息を吐いた。

「やっぱり……ギロロじゃないのね」

米を頬いっぱいに頬張りながら、ケロロはにっこりと笑った。


前のページ    次のページ


G66×723 に戻る
NOVEL に戻る
TOPに戻る