■Detective G66:4
裏庭に続く角を曲がると、夏美はケロロを地面に放った。
「いだっ!ちょっと夏美殿!」
文句を言いながら手に付いた土を払って立ち上がると、暗い庭に人影が見えた。
「これはギロロ殿、夏美殿。隊長殿も」
「ドロロ?どったの」
近づこうとしたケロロを、ギロロの腕が遮る。
「待て。ケロロ、ドロロの手を見てみろ」
「何でありますか……あっ、それは!」
「ボケガエル、あれあんたの!」
「え、なに?」
首をかしげるドロロの手には、気味の悪い目玉のような物体が握られていた。
「それ、我輩のデジカメ!」
「ドロロ、お前それ、どこで手に入れた」
「手に入れたって、そんな……今ここで拾ったんでござるよ」
困惑するようなドロロを見て、ギロロはケロロに向き直り、ゼロ距離体勢で怒鳴った。
「現場のシャッター音に、デジカメ……さてはお前だったのか!?」
「まさかボケガエル、あんた!」
「ち、違うであります!我輩プラモ買いに行ってたってば!帰ってきたとこ、ギロロも見たっしょ!?」
「そんなの、何食わぬ顔で戻って来たのかもしれん!」
「ギロロが見た人影は小さかったんでしょーが!我輩あのとき、ペコポン人スーツ着てたし!」
「あんなスーツ、すぐに着脱可能だ!」
「あーもう、これプラモ買ったときのレシート!時間見れば我輩じゃないってわかるであります!」
ケロロは紙切れをギロロの顔面に押し付けると、付き合っていられないとばかりに背を向け、
歩いて行ってしまった。
まだ怒り顔のギロロから、夏美はレシートを奪い取る。
「ちょっと見せて。暗いからよく見えないなぁ……うーん、確かに、これならあいつには無理ね」
夏美がそう呟くと、ギロロは鼻を鳴らして腕を組んだ。
そんな二人にドロロが声をかける。
「あ、あの〜、二人とも、なにがあったの?」
「あら、ドロロ」
「まだいたのか」
「ひ、ひどいよ〜」
涙目のドロロに、ギロロは事情を説明した。
「ぐすん、ギロロくんも大変だね」
「それでドロロ、念のために聞くが、この時間、お前どこにいた?」
「僕を疑うの!?」
「念のためと言っただろうが!」
「うん……。僕、その時間は山のほうで瞑想してたよ」
「誰かと一緒だった?例えば小雪ちゃんとか」
ドロロは膝を抱えたまま首を横に振った。
「ぼく、アリバイが無いんだね?」
ますます涙が止まらなくなってしまったのを見て、ギロロはその肩に手を置いた。
「大丈夫だ、俺は疑ってなどいないぞ。第一、お前には動機が無いだろう」
「ほんと?ほんとに?疑ってないの?」
「男に二言はない」
その言葉に、ドロロは目元を拳でぐいと拭うと、しっかりと立ち上がった。
「では拙者、ギロロ殿のため、周囲の聞き込みなど、助太刀するでござるよ!トイヤッ!」
一瞬にしてドロロは闇に消えた。
ギロロがほっと息を吐くと、その頭を夏美がつんつんと突いていた。
「ん、なんだ」
「いいとこあるじゃん」
「何のことだ?」
夏美の方を向こうとして、ギロロが足をうごかすと、わずかに当たるものがあった。
足元を見ると、先程ドロロが持っていたデジカメが落ちていた。