■Detective G66:3
軍曹ルームを通って日向家廊下に出ると、冬樹がリビングから飛び出してきた。
「軍曹!伍長も、大変だよ!」
「そんなに慌てて、どうしたでありますか」
「伍長のテントがっ」
言い終わらないうちに、ギロロは冬樹の足元をかすめて外へと走っていた。
「な、夏美!」
窓を開けたギロロが見たのは、夕闇が迫る薄暗い庭で、テントを持ち上げる夏美の姿だった。
夏美はギロロに気付くと、軽い物のようにテントを地面へ放った。
ずしん、と音がして、テントが地に落ちる。
「あら、いたの」
「俺のテントをどうするつもりだったんだ!」
「撤去よ」
「なんだと?」
「のぞき魔となんか暮らせないから」
睨む夏美の眼光に怯みながらも、ギロロは踏ん張った。
「あれは俺じゃない」
「あそこにはあんたしかいなかったじゃない」
「俺は人影を追っていたんだ。敵性宇宙人の可能性もある」
「ふーん。そんなのが本当にいたなら連れて来なさいよ」
冷ややかに見下ろす夏美とギロロはしばらく睨み合った。
「俺が信じられないと言うんだな」
低く放たれた言葉に一瞬体が強張ったが、夏美は腕を組んで鼻をツンと上に向けた。
「証拠が無いなら信じるも何もないじゃない。そうだ、いいこと思いついた。
真犯人を探すんでしょ?私も一緒に行くわ」
「なに!?」
「証拠捏造されても困るし。本当に真犯人が見つかったら謝るわ。
その代わり、今日中に見つからなかったら、テントは撤去。いいわね」
「……承知した」
ギロロは短く返事をすると、現場の方へ向けて歩いて行った。
「そこで聞いてたんでしょ、ボケガエル」
「ゲロッ」
夏美がリビングの窓を開けると、ケロロが転がり落ちてきた。
窓に耳を付け、話を伺っていたようだ。
「あんたも来なさい!アイツと連帯責任だからね」
「なんで我輩が!?」
「アイツの友達なんでしょ?さ、一緒に来る!」
言うなり夏美はケロロの頭をむぎゅっと掴んで持ち上げ、裏庭へと運んでいく。
すっかり夜の帳が下りた日向家の庭に、ケロロの叫び声が響き渡った。