■Detective G66:2


「映像なんてあるわけねーだろ」

うずまきメガネは鼻に指を突っ込みながら、ラボの椅子に踏ん反り返った。

「なぜだ!作戦区域の監視は貴様の仕事だろうが!」
「毎回毎回、仕掛けたカメラを壊して『風呂周辺の監視は俺がする!』とか言ってたのは  どこの先輩っスかね〜」

ギロロは言葉に詰まった。

「そ、それは貴様が夏美の風呂をのぞくからだ!」
「でも今日は、そのギロロ先輩がのぞきに間違えられたんだろ?
 俺を追い出して自分がのぞくとは、まったく世話ねぇぜ」
「貴様!」

今にも飛び掛かろうとするギロロを、ケロロが羽交い締めにした。

「とにかく、映像は無いんでありますな」
「クックー、音声ならあるぜ」
「盗聴してたのか!?」
「あーめんどくさいから喧嘩は後でありますよ。クルル、再生ヨロシコ」
「了解〜。ポチっと」

暴れていたギロロも、夏美の鼻歌が聞こえ始めると、動きを止めて耳をそばだてた。



『ふー、いいお湯』
『ねーちゃん、もうすぐご飯できるよ』
『あーはいはい、もうあがるわ』

カシャッ

『誰っ!?』
『な、夏美!』

ギロロと夏美の短いやりとりの後、スコンという音とギロロの叫び声が同時に響いた。

『最低!この変態エロダルマ!』

そして乱暴に窓が閉められる音がして、音声は途絶えた。



夏美のセリフを再度聞いてしまったギロロは、また頭をがっくりと落として座り込んでしまった。
ケロロは眉間にしわを寄せながら、その姿を見てため息をつく。

「これじゃ全くわからないでありますな。ギロロ伍長、犯人を追跡中だったんでありましょう?
 どんな姿だったか見てないわけ?」
「影が……」
「影?」

ケロロとクルルが首を捻った。

「小さな影が、去っていくのが見えた。小さな人影だ……ケロン人ほどの」
「ケロン人!?」
「確かに、俺達のうちの誰かなら、警報が鳴らなかったのも納得がいくぜぇ」

嫌みに笑うクルルに、ギロロはつかみ掛かった。

「風呂をのぞくケロン人など、貴様しかいない!」
「動機があるのは先輩も一緒じゃねーか」
「ギロロ!クルルも!やめるであります」

ケロロがギロロを引きはがす。

「で、改めて聞くけど、クルルはやってないんでありますか?」
「もちコース」

クルルは口元に手をやって陰湿に笑った。

「ちょうどその時間なら、俺はここで新しいセキュリティプログラムを組んでいたとこだぜぇ」
「証拠は?」
「証人がいるんでな」
「クルルさーん、さっき言ってた不具合、確認してきました……あれ、おじさま?」

ラボに現れたのはモアだった。
ケロロたちを見て驚いた顔をしたが、事情を話すと笑顔で答える。

「はい、その時間ならクルルさんはここにいましたよ。
 その後、トラブルがあって、私が外のセンサーを見てきたところなので、
 その間のことはわかりませんけど。てゆーか、事実無根?」
「それなら、クルルにはアリバイがあるでありますな」

舌打ちするギロロを見て、クルルは愉しそうに笑った。

「残念だったな、センパ〜イ」
「うるさい!ケロロ、行くぞ!」
「へ?どこに?」
「こういうときは現場百遍!」
「どっかの刑事みたいでありますな……」

ギロロに引きずられて行くケロロを、クルルとモアはハンカチを振りながら見送っていた。


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