■Who's baby!?:2
ここはケロロの部屋。
ケロロはあの後、真っ白な俺と夏美を自室に回収し、小隊メンバーに召集をかけたようだ。
「捨て子ってことですかぁ?」
「違うわ、これは私の子よ」
先程から何を言っても、『私の子』の一点張りで話にならないのだ。
赤子はいつのまに起きたのか、夏美の髪を引っ張ってご機嫌そうに笑っている。
ありえない……ありえない、が、目元が夏美に似ているような……
ええい、うろたえるな、俺!
ケロン軍人はうろたえない!
「んで、なんかわかった?ハカセ」
「んー、こいつはおそらくペコポン人のガキじゃないぜぇ」
「それホントですかぁ?見た目はまるっきりペコポンの赤ちゃんですぅ」
「可能性はいくつかある。DNAでも取らせてくれりゃ話は早いんだが」
それを聞いて全員が赤子を見ると、夏美が怒ったように言った。
「あんたたち、何かたくらんでるでしょ!?私の子は絶対渡さないわよ!」
そしてさらに強くその胸に抱いてしまう。
ケロロのため息が部屋に響いた。
「手も足も出ないであります。寄生型の侵略宇宙人の可能性だってあるのに」
「なにぃっ」
俺は思わずケロロにつかみ掛かった。
「ちょちょ、放してギロロ!」
「ギロロ殿!」
ドロロが間に割って入ってくれたおかげで、我に返る。
「しかし、見たところ、夏美殿はおそらく洗脳状態。隊長殿の読みでほぼ間違いないでござるよ」
「となると、最悪子供は最後に母親を栄養に……」
「クルル曹長!」
ケロロが強い語調で続きを遮った。
クルルは舌打ちをしたが、ケロロが言わなければ俺の手が先に出ていたところだ。
「あーあ、めんどくせぇ話はやめだ。真相が一発でわかる質問をしてやるぜ」
「クルル!そんなのがあるなら最初っからやってよ!」
楽しみは最後までとっておくタイプなんでね、とクルルは嫌味に笑った。
「いくぜ……日向夏美」
その場の全員が息を飲む。
「そのガキの父親は、誰だ?」
ケロロが盛大にずっこけた。
「何かと思えばそんなこと〜?」
「いや、父親が何星人かわかれば、犯人がわかるでござるな」
「そんなうまくいくわけないですぅ」
「いいや、わからんぞ!父親は誰なんだ、夏美!」
例え嘘だとしても、夏美の口からそれを聞くのはキツい。
俺は刺されたように痛む胸の前に拳を握って叫んだ。
すると夏美はきょとんとした顔で、俺達を見渡す。
赤子も一緒になって見ていたが、夏美はすぐににっこり笑って言った。
「やだぁ、忘れちゃった?この子のお父さんはあなたでしょ、ギロロ」
俺にはその笑顔が悪魔の微笑みに見えた。