■Who's baby!?:1
こんなにまだ暑いというのに、空ばかり秋らしい様子で、うろこ雲を高い位置に浮かべている。
肌にまとわりつくような残暑の中、庭で武器の点検をしていると、
家の中からケロロの鼻歌が聞こえた。
洗濯物が取り込まれたのが数時間前。どうやら今は玄関の雑巾がけをしているようだ。
ご機嫌で家事をこなす上司に苦い思いをしながらも、俺はため息をつくしかなかった。
なにせ、命じているのは最愛の思い人なのだ。
「ただいま〜」
その夏美が学校から帰ってきたようだ。
「夏美殿。お帰りなさいであります!っってキィヤアアァァァ!!」
「うるさいわよ、このボケガエル!」
「ギロロ、ギロロぉぉ!」
不意に名前を呼ばれて背筋が伸びた。
厄介事がピコピコと軽快な足取りで駆けてくる。
ガラッと窓が開いて、緑色の塊が転がり出てきた。
額で着地したのを見届けて、俺はこれから起きる面倒への覚悟を決める。
「どうした、ケロロ」
「夏美殿が、夏美殿がぁ!」
「夏美ならさっき元気そうな声が聞こえたぞ」
自慢じゃないが、声色で大体の体調くらいは予測がついてしまうのだ。
ケロロはがばっと立ち上がり、窓を指した。
「見てよ!夏美殿が……」
「ほんっとうるさいんだから、静かにしてよね。私の子が起きちゃうでしょ」
ケロロが驚きのあまり顎を落とした。
俺も窓辺に立った夏美に視線を向けると……
そこには、赤子を抱いた夏美。
「騒ぐのはやめてよね。私の大事な赤ちゃんなんだから」
私の……
大事な……
赤ちゃん…………?
頭が真っ白になった俺は、ついでに全身まで真っ白になって立ち尽くした。