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■You gotta mail:1


わずかに傾いた太陽が、家へと歩く夏美を照らしていた。
両手には夕食の為の買物袋を下げている。

「ちゃんと洗濯物取り込んでるかしら、ボケガエルのやつ」

心なしか、風も冷たくなってきている。曲がり角で全く気をつけていなかったのは、
いつのまにか早足で歩いていたせいもあった。

「きゃっ」
「いたっ」

おもいきり、顔をぶつけてしりもちをつく。当たった相手に目をむけると、
同じくしりもちをついて、目をまわしていた。
スーツの上に、取って付けた様な緑色の顔。

「ボケガエル!」
「夏美殿!申し訳ないであります」
「仕方ないわね、私もよく見てなかったし」

ビニール袋の中は卵が何個かやられてしまったが、あとは無事なようだった。

「そういえばどこ行くのよ」
「ゲロっ……いやぁ、ちょっとそこまでガンプラを買いに」
「洗濯物は入れたでしょうね?トイレ掃除は?」

顔を近づけて睨むと、半笑いのまま汗を大量に流した。

「あっ、あんなところに623が!」
「えっ、どこどこ623さん!?」

ケロロの指差した先には、電線に停まるカラスが一羽。夏美と目が合うと、
カァ、と間抜けな泣き声を漏らした。

「ボケガエル!!」

振り向くとそこには既に影も形もない。帰ったら覚えておきなさい、
と心に叫んで歩きだした。


玄関を開けると人気がない。冬樹はまだ帰っていないようだ。
しかし夏美はそこに珍しい姿を見た。

「クルル?」
「よぅ、ちょうどよかったぜ」

基地の入口から出てきたところに出くわしたようだった。

「珍しいわね、あんたが普通の通路で登場するなんて」
「たまには歩かねーとなまっちまうからな」
「で、何か用?」
「ギロロ先輩にメールが来たから見に来いって言っといて欲しいにょー」
「わかったわ」

それだけ言うと黄色い背中を向けて、いつもの陰気な笑い声を立てる。

「女からの大事なメールだから、ちゃんと伝えてくれよな」

くーくっくっく、と廊下に響く声はいつもより楽しげだ。
夏美は急いで買物袋を置き、庭へ向かった。
すっかり傾いた日差しの中、武器を磨く姿を見つける。

「ギロロ!」
「帰ったか、夏美」
「うん、ただいま。それより、なんかクルルがあんたに用事があるって言いに来てたわよ。」
「用事?」

通信ではなくわざわざ言いに来るとは、よっぽどの機密事項だろうか。
ギロロは考えを巡らすが、思い当たる節がない。
ふと夏美を見上げると、その瞳は好奇心に輝いていた。
そのいきいきとした表情に、思わず赤面してしまう。

「な、な、なんだ」
「ギロロにメールが来てるんだって。それも大事なメールが、女の人から!
 ギロロも隅に置けないわね~」
「んなっ!?お、女?」
「実は恋人を残して来てたとか?まさか結婚はしてないわよね?」
「こ、恋人……結婚!?」
「あたしとあんたの仲じゃない、だまってるなんて水臭いわよ。
 恋愛相談ならまかせてね!」

ご丁寧にウインクまでして去っていく。そんな想い人を見送るギロロは、
反論する気力もなく真っ白に燃え尽きていた。


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