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これからする話はお前にとって、迷惑かもしれん。
だから、聞きたくなくなったら言ってくれ。黙って立ち去ってもいい。

ああ、火が小さくなってきたな。寒いか?湯を沸かしてお茶でも……
あ、ああ、すまない。ちゃんと話そう。

俺がここに来た日のことを覚えているだろうか。ありったけのトラップを仕掛け、
お前を待ち受けていた。いとも簡単に突破され、更に一発KOされたがな。

お前は信じないかもしれんが、俺はこれでもケロン軍有数のソルジャーなんだ。
それが年端もいかない少女に負けた。俺がその時、どんな気持ちだったかわかるか?

衝撃だった。俺の人生で、あんなことはなかったからな。
お前に殴られたあの時、俺は直感したんだ。こいつには勝てない、と。

ああ、わかっている。お前はただの成長途中のペコポン人女子だ。
確かに強いが弱いところも沢山ある。
しかし、俺はあの瞬間に、お前の可能性を見た気がしたのだ。
肉体的な意味ではない、お前の魂の強さ……

すまん、あの日のことはやはりうまく話せんな。俺の人生の転機となった日だ。
そして、今日もそうなる。

長々と前置きをしてしまった。一番話したかったことを話すとしよう。
俺の目を見て聞いてくれ。……俺の顔が赤いだと?い、いい!今は気にしないでくれ。

夏美、お……俺は、初めて会ったあの日から、お前に惚れている。
今まで幾度となくお前を助けたのは、惚れた女を守りたかったからだ。

お前が俺をどう思うかは言わなくていい。聞きたくないというのが本音だ。
意気地が無くてすまん。だが、聞いたところでどうにもならないのだ。

なにせ、俺達は本日を持って地球を撤退する。

さっきケロロのところへ通知が来たところだ。通常の撤退通り、俺達に関わった
者たちの記憶を消し、全ての痕跡を消すことになる。
だからこの、俺にとっては一世一代の告白も、無かったことになるわけだな。
しかし、そうでもなければ言えなかったのも事実だ。笑ってくれていい。

それでも、俺はお前と、このお前への気持ちを絶対に忘れない。

さぁ、これで俺の話は終わりだ。0時までに荷造りをしなければならん。
最後まできちんと聞いてくれたな。礼を言う。

もう夜も遅い。部屋に戻って一晩寝れば、俺達が来る前の静かな日常が戻って来るだろう。
今まで本当にすまなかった。

そんな顔をするな。大丈夫だ。お前には秋や冬樹、気に食わないがサブローや東谷小雪……
沢山の友人がいるだろう。
どうか、元気でやってくれ。そして、俺が遠い戦場からお前を想うことを許して欲しい。
じゃあな。


……なに、お前からも話が?いやいい、この話に対する返答など、やめてくれ。

今から全て忘れてしまうお前から、なにかを聞くのはつらいんだ……
俺はこの長い一生、それを忘れられないだろうから。


……全く、お前はいつでも俺の言う通りにしてくれないな。この跳ねっ返りめ。
そこまで言うなら聞こう。お前の気が済むのならば。


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