■Stay on the beach:1
夏の海は気まぐれ。
私の心はカモメに乗って飛んでいく……
なぁーんて、詩人じゃない?私。
623さんのラジオにハガキ出したら、読んでもらえるかな?
私たちは今、毎年恒例の海水浴に来てるんだ。
桃華ちゃんがプライベートビーチに招待してくれたの。
ママが仕事で来られないのは残念だけど、小雪ちゃんも来てるし、
サブロー先輩も来られたら良かったのにな。
なんか忙しいんだって。代わりに珍しく、クルルが来てるみたい。
あーぁ、せっかくの海なのに、一緒にいるのは得体の知れないカエルばっかり。
「はぁ……」
ため息と共につぶやくと、斜め下から声がした。
「どうした夏美、腹でも痛いのか」
私は一気に自分の世界から引き戻される。
「まったく、ギロロってデリカシーないわね」
「な、なに!?」
「まぁいいわ、遊んでこーよぉっと!荷物番よろしくね〜」
切替が早いのも、私のいいところ!
後ろで何かが固まったような音がした気がしたけど、
気にせず私は海に向かって走り出した。
「夏美さん、はやく〜!」
ドロロと小雪ちゃんは、一足先に波と戯れていた。私もダッシュでそこに混ざる。
「夏美さん、どこまで泳げるか競争しましょう」
「のぞむところよ!」
「そのレース、我輩も参加するであります!」
突然、海面からボケガエルが飛び出してきた。
「ちょっと!びっくりするじゃない」
「ゲーロゲロゲロ!この程度で驚くとは、夏美殿もまだまだでありますな」
「なぁんですって!?」
「悔しかったら我輩に遠泳で勝って見せるであります」
「いいわ、受けて立とうじゃない」
「夏美さ〜ん……」
小雪ちゃんは心配してくれるけど、遠泳なら私も自信があるわ。
ボケガエルは泳ぐスピードは早いけど、スタミナはそんなにないはず!
普段ぐうたらしてるし!
「先にあの島まで行って、帰った方が勝ちであります」
「わかったわ」
二人してスタートするために海辺へ並ぶ。
いつのまにか、勝負は私とボケガエルの一対一になっていた。
「よーい、どん!」
小雪ちゃんの合図と同時に、二人並んで飛び出した。