■Present for you:1
一日の大半を外で過ごしていると、季節の移り変わりが肌で感じられる。
昨日までは暑いながらも穏やかさがあった日差しが、今日は全く容赦がない。
夏が来たのだ。
いつかのように、暑気中りで倒れては格好が悪い。大人しく日陰に入り、
濡らしたタオルを首にかけた。
そのまま日課である武器の手入れをしていると、緑色がほてほてと歩いて来る。
「あぢ〜。よくこんな日に外にいられるでありますな」
「何の用だ」
「ちょっと頼まれて欲しいんだけどさ〜」
ケロロいわく、新しい侵略作戦のために、宇宙人街で買ってきて欲しいものがあるのだと言う。
「このメモの物なんだけど」
手渡されたそれには、10以上の品物が書いてあった。
「なんで俺が貴様のお使いなんぞしなきゃならんのだ」
「いや、マジでいけてる侵略作戦思い付いちゃってさぁ、それに必要なんだよね。頼むよ〜」
「そんな作戦、昨日の会議では聞いていないが」
「だーかーらー、さっき思い付いたの!今クルルがそれに使うメカ作ってて、
材料足りないんだって。我輩は今それ手伝ってるから手が放せないんであります!」
聞きながら、リストに目を通した。
「この冷却剤やらニューマチックチューブやらは良いとして、宇宙メロンパン、
ゲロロ艦長サントラCDやらってのは何なんだ」
「あー、そのCDは、行くならついでにってことで……」
「ふざけるな!やってられるか!」
メモを放り投げると、ケロロがいつもの厭味な声で笑う。
「ゲロゲロリ。ほんとに行かないんでありますか」
その時、ケロロの背後の窓が開いた。
「いこ、ギロロ」
「な、な、夏美!?」
出てきた夏美は半袖パーカーにショートパンツという軽装だ。
目のやり場に困ってそっぽを向く。
「どういうことだ、ケロロっ!」
「どーもこーも、夏美殿が休みでヒマだって言うから、
宇宙人街にでも遊びに行ったらどーかなー、って言ってみたんでありますよ」
「昨日から宇宙人街のデパートでセールやってるんだって。
モアちゃんがカワイイお洋服いっぱい買ってきててね」
「さすがに一人じゃ危ないから、ギロロも……と思ったんだけどー。
無理ならいいや、タママに頼むであります」
「まてまてまてまて!俺が行こう」
「いいの!?ギロロ」
夏美が笑顔になると、そこにまるで大輪のひまわりが咲いたようだ。
夏美の陰でケロロがニヤリと笑うのが見えた。
「侵略作戦の為だしな、仕方あるまい」
「えー、ちょっとボケガエル、侵略って何の話よ?」
「わーわーわー、なんでもないでありますよ!さぁ二人仲良く行った行った!」
ケロロは俺を夏美の方へ押しやると、さっさと基地の方へ戻って行った。
「怪しいわね。まさかギロロ、あいつまた何かたくらんでるわけ?」
「い、いや、何でもないんだ。気にするな」
夏美はしばらく腕を組んで唸っていたが、ぽんっと手を叩いて言った。
「悩んでてもしょうがないわね!せっかくの買い物だし、楽しまなくっちゃ。いこ、ギロロ」
言いながら、にっこり笑って俺の手を取る。
「わ、や、やめろ!」
「なによ、そんなに嫌がらなくてもいいじゃない」
「嫌なわけではない!突然そういうことをするな!」
「へ〜、嫌じゃないんだぁ」
夏美はにんまり笑って、俺をぬいぐるみのように抱きかかえた。
「のわ〜〜!」
「熱っ!熱でもあるの?」
「ないない!ないから下ろせ!」
「はいはい」
ようやくたどり着いた地面で、四つん這いになって荒い息を落ち着ける。
「ほんとに大丈夫なの?」
「も、問題ない」
動悸が落ち着いたところで、俺達は宇宙人街へと出発した。