■モーニングコール:1
空に浮かぶ雲が高い。
こんな日はソーサーで飛ぶのも気分が良かった。
かと言って、低い雲を避けるように飛ぶのも嫌いではないのだが。
日課のパトロールを終えたギロロは、庭にソーサーを下ろしたところで呼び止められた。
「あ、ギロロやっと帰ってきた」
「夏美?どうした」
夏美は日向家の窓から顔を出していたが、
庭に下りるとテントのすぐ脇に立った。
「ギロロにお願いがあって」
「お願い?」
言葉の響きに、ギロロはなぜか顔を少し赤らめた。
「珍しいな。俺にできることならば良いが」
「うん、大したことじゃないんだけど」
ギロロはとりあえず話を聞こうと、置いてあるブロックに腰を下ろした。
夏美もそれにならう。
「あんた、いつも朝早いじゃない。明日起こして欲しいのよ」
「そんなことか?構わんぞ。何かあるのか」
「うん、『623の俺ラジオ』のスペシャルがあって。朝5時からなの」
「ずいぶん早いな」
ギロロが驚くと、夏美はその顔を覗き込んだ。
「ダメ?さすがにまだ寝てる?」
「いや、構わん」
どうせ6時頃には起きているギロロにとって、大した早起きでもない。
「しかし、どう起こすんだ?窓でも叩くか」
ギロロは二階を見上げた。
「ううん、それだと起きないかもしれないじゃない。
私、携帯を枕のそばに置いておくから電話してくれない?」
「了解した」
「メアドは知ってるけど、番号は知らないわよね?教えるから登録してよ」
「あ、ああ」
ギロロは携帯を取り出したが、操作がよく解らず、結局夏美に登録をお願いした。
「はい、これで登録されたわよ。
私にワンコールしといたから、リダイヤルでかければいいわ」
「すまん」
「こちらこそ、明日はよろしくね」
夏美は立ち上がると、家に戻って行った。