■Keron Mermaid -500voices-:12


夏美は自分のベッドの上で目を覚ました。

「あ、姉ちゃん目が覚めた?」
「冬樹」

そこには制服姿の冬樹が座って雑誌を読んでいた。
手元のページを開いたままに、冬樹が席を立って夏美に近づく。
なぜか小声で話しかけた。

「かなり熱下がったんじゃない?顔色もいいみたいだよ」

手渡された体温計を大人しく脇に挟む。

「おなかすかない?朝から何も食べてないんでしょ?もう夕方だよ」
「言われてみれば、すいたかも」
「軍曹がおかゆを作っておいてくれたんだよ。温めなおしてくるね」
「ボケガエルが?」

席を立つ冬樹の背中を見て、夏美は飛び起きた。

「そういえば!ギロロはどうしたの!?」

冬樹は口元に人差し指を立てた後、そのままその指で夏美の足元を指差した。

「しーっ。伍長ならそこ」

ベッドの足元に目をやると、ギロロがそこに頭を乗せていた。
よく眠っているのか、その肩は規則正しいリズムで静かに上下している。

「軍曹たちも疲れたとか言って、自分の部屋で寝てるよ。
 伍長もさっきまで起きてたんだけど、寝ちゃったみたいだね」

冬樹は部屋を出て行った。
夏美はそっとギロロを持ち上げると、自分の横に寝かせた。

「昨日の夢の中から、ずっとがんばってくれたもんね。
 ゆっくり眠っていいよ、ギロロ。私も……眠い……」


「姉ちゃん、おかゆ……あれ」

そこには仲良く眠り込んでいる二人がいた。
冬樹は苦笑して、無駄になったおかゆを持ったまま部屋を出ていった。



■Keron Mermaid -500voices-:END


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