■The love story started suddenly:1


夏美がケロロ渾身のジオラマ『コンスコン強襲』を破壊してから1週間。
さすがに壊したことはばれてしまったが、皆で壊れた分を手分けして作ることで ケロロの機嫌は直ったようだった。

しかし、興味のない細かい作業を長く続けるのはつらいものがある。

「あーっ、ギロロ、そこは後で塗装するんだからまだ組んじゃダメでありますよ !」
「えーい、やっていられるか!」


ギロロが手に持っていたドムの頭を放り出すと、他のの皆も口々に言い訳をしな がらケロロの私室を出ていった。

「ムキーっ、なんだよあいつら!タママまで!」
「おじさま、モアが最後までご一緒します。ていうか、比翼連理?」
「モアどの〜!」

目を潤ませて手を取りながら、ケロロはふと気づいた。

「そもそもの原因は夏美殿なのに、何の罰も受けてないなんておかしいでありま す!」
「ナッチーさんなら謝ってましたけど……」
「『ごめんね〜』の一言で済んだら警察いらないであります!」

ヒートアップしてきたケロロはゲロリと不敵な笑みを浮かべた。



そして翌日、夏美は朝食の支度をしようと降りてきて、キッチンの異常に気づいた。

「早いな、夏美」

見慣れた赤い宇宙人が、見慣れない格好でキッチンに立っている。ギャルソンの ように黒いエプロンをして、
黒い蝶ネクタイに、手首には白いカフス。まるでカ フェの店員のような出で立ちのギロロが、皿を並べていた。

「お、はよ…」

あまりの出来事に、夢の続きかと目をこすった。

「何を寝ぼけている。顔でも洗ってこい」
「ちょっとまって、これはなにごと?」
「何を言っている。朝食の準備でございますよ、マドモアゼル」
「ま……マ……!?」

夏美は目を白黒させたが、ギロロはそんな様子にもお構い無しで、小さな手に卵 を二つ握った。

「卵はどんなのが好みだ?スクランブルエッグ?チーズを入れてオムレツにする か?」
「……目玉焼き」
「サニーサイドアップ?」
「う、うん」
「とりあえず、顔を洗ってこい。目やにがついとるぞ」
「えっ!?」
「冗談だ」

笑いながらギロロは踏み台を動かし、よじ上ってフライパンに卵を落とした。

ギロロが…軽口を叩きながら…料理をしている?

夏美はくらくらする頭を片手で支えながら、洗面所へ向かった。

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