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■Rookie loves cookies:4


「俺は、お前のことが……」

「こんなところで何やってるんでありますか、タママ二等」

突然肩を叩かれて、驚きのあまり正面のガラス戸におでこを打ち付けてしまった。
ガツンと大きな音がしてしまい、慌てて振り返ると、そこには軍曹さんが笑顔で立っていた。

「そんな驚かなくても。なんかマズかった?」
「あ、いや、その」
「誰だ!?」

ガラス戸を開けたのは、真っ赤な顔をした伍長さんだった。

「タママ!お前なんでここに……そうか、クッキーのことを確かめに来たな。心配ない、俺が確かに頼んでやったぞ」
「ふぅん、そういうことだったの」

伍長さんの背後にはナッチーが立っていた。

「夏美!」
「あんたがクッキーなんて、おかしいと思ったのよ。タママに頼まれたのね。
 タママも、直接私に言えばいいじゃない。いくらでも焼いてあげるのに」
「……え」
「ちょうど今、焼けるところよ。ボケガエルもタイミング良かったわね。おやつにしましょ」
「わーい!であります」
「わ、わーい!僕も混ざるですぅ」

家に駆け込もうとした僕の首根っこを、ギロロ先輩がむんずと掴んだ。

「西澤家のお菓子を食べている僕には、夏美は手作りをしてくれない。そう言ったな」
「これには訳が……」
「問答無用!スペシャルハードコースで訓練開始だ」
「ひぃいいぃ」

香ばしく焼けるクッキーの甘い香りを掴むように、僕は手足をばたばたさせながら引きずられて行った。





その日の夜。

やっと訓練から解放された僕は、立ち上がる気力さえ失って、何も無くなったバーチャルルームの中で大の字になっていた。
ギロロ先輩が西澤家まで送ってくれると言ってくれたけど、そんな情けに甘えられるほど大人じゃない。

せめて栄養補給をしろ、と投げ渡されたスポーツドリンクを飲みながら、携帯を取り出した。

ムービーはお粗末な映り方だったが、さっきのやりとりの間じゅう、ギロロ先輩を捕らえていた。
もちろん、あの情けない赤ら顔も、噴火のような湯気も、全て映っていた。

……あの、人を射るようなまなざしも。


僕は親指を動かして、動画を消去した。

「こんなの送らなくても、いつか僕がギロロ先輩より強くなればいいだけですぅ」

唇を噛む僕の脳裏には、ギロロ先輩のあの目が思い出されていた。


■Rookie loves cookies:END


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