■HALLOWEEN BITE!:1
「諸君!本日は何の日か知ってるでありますか!?」
会議室の壇上でケロロが叫んだ。
「はーい僕知ってるですぅ!ハロウィンですよね、軍曹さん」
「正解であります、タママ二等!」
俺の横で黒い後輩が喜んでいた。
言われなくとも、俺だって知っている。
異国の祭で、子供が菓子をもらって歩くのだ。
「我々もペコポンに来て久しい。当然このハロウィンについては
説明するまでもないでありますな」
「フッ、くだらん。まさかそのために緊急会議を開いたんじゃあるまいな」
「ちっちっち。ギロロ伍長、わかってないであります」
ケロロは目を細めて人差し指を左右に振る。
俺はいらついて、腕を組み直した。
「ハロウィンとは一年で唯一、お菓子をくれない相手にいたずらをしていいという日!
これを利用して、夏美殿を一気に叩くであります!」
「なにっ!?」
机を叩いてケロロが拳を振り上げると、正面モニターに略図のようなものが映った。
「まず、日向家のお菓子を全て回収!その後、夏美殿に『トリックオアトリート』と言いまくり、
お菓子を出せないと見たところで一気に襲撃するであります!」
「なんだそれは。いつものように、返り討ちにあうのが関の山だ」
俺がため息を付くと、後ろに座っていたクルルがノートパソコンを開いた。
「いや、俺様の計算なら、お菓子を出せないのを引け目に感じて、
日向夏美のパワーは通常の4割減だぜぇ」
「それなら僕たちにもなんとかなりそうですぅ」
「本当にうまくいくのか?」
その言葉に、ケロロがニヤリと笑った。
「そんなこと言って、夏美殿に嫌われたくないだけじゃないの〜?」
「な、なにっ!?違う、断じて違うぞ」
「じゃ、ギロロ伍長、実行部隊は貴様に任せるであります!」
「なっ……」
口をパクパクさせるばかりで言葉を継げない俺を置いて、ケロロは話を進めた。
「んじゃ、タママ二等はお菓子回収!ギロロ伍長はタママ二等が戻ったら、夏美殿のところへ!
我輩とクルルはそれまで待機!以上であります!」
「了解!」
俺以外の声が部屋に響く。
仕方なく敬礼だけすると、俺は準備のためにテントへ戻った。