■Beauty & Invador:11





『お疲れにょ〜。エンディングはすっとばさせてもらったぜぇ』

間の抜けた声がスピーカーから聞こえて、二人は目を開けた。
辺りには、無機質な壁が広がっている。見慣れた基地のバーチャルルームだった。

「これは……」

「ちょっとクルル、どーなってるでありますか!?これから我輩が真打ち登場って感じで出ていくはずだったのにぃ」

向こうのほうでケロロが叫んでいる。
よく見れば、タママやドロロ、他の地球人たちも部屋の中で呆然と立ち尽くしていた。

「そうか、俺達はバーチャルルームにいたのか……」

『隊長、のんきなこと言ってんじゃねーよ。今まで現実のこと忘れてたくせによ』

「……ゲロォ」

『お二人さんも、いつまでイチャついてんだよ』

クルルの声に、我に返った二人は、固く抱き合っていたことに今更ながら気づいた。

「え……」

「あ……きゃあっ!」

とっさのことでパニックになった夏美はギロロを投げ飛ばしてしまい、ギロロは見事に壁へめり込んだ。

「ギロロ!ごめん!つい……」

慌てて夏美が駆け寄る。
バーチャルルームにクルルの笑い声がこだました。

『状況説明すっから、とりあえず全員来てくれ』

マイクを切ったクルルの後ろで、サブローはため息をつくと、足元に落ちていた絵本を拾い上げた。

「久しぶりにちょっと疲れたね」

「たまには使わねーと頭も錆び付くからな。リハビリにちょうどよかったぜ」

「俺は久々にクルルの本気モードが見られたから別にいいけど」

舌打ちする後ろ姿をにやにやと眺めながら、手元のページを最後までめくった。

「しっかし、まさかこんな終わり方とはね」

「キャラ的にはアリだろ?」

「……ん、まぁ」

サブローの開いているページには、こう書かれていた。


『お花の前でキスをしても、呪いが解ける様子はありません。
 ブチ切れた姫が枝を叩き折ると、花は一つ残らず枯れ落ちてしまいました。
 するとどうでしょう。全ての呪いが解けていくではありませんか。
 実はその花こそ、呪いの元凶だったのです……』


「敵も、作者のひねくれ具合には考えが及ばなかったみたいだね」

「ウィルスの奴が花を壊そうとしているのに気づいてからは、妨害するふりするのに逆に苦労したぜ」

クルルは手元のパネルを操作して、正面モニターに、ギロロと夏美の二人をアップに捉えた。

「今回はめんどくせーことになったが、イイもん見れたからよしとするか」

気絶したギロロを抱き上げる夏美を見ながら、クルルは一際愉しそうな笑い声を上げた。


■Beauty & Invador:END


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