■Detective G66:epilogue


クルルにたっぷりとお仕置きをした二人は、今は並んでたき火にあたっていた。
空気が澄んでいるのか、星がよく見える夜だった。
夏美は火を避けるようにして、脚をぐっと伸ばした。

「はぁー疲れた」
「ほっとしたぞ」
「そう?」

首をかしげる夏美を、ギロロはちらりと横目に見た。

「テントが撤去されずに済んだからな」
「あー……。あのときはごめんなさい」
「わかってくれればいい」

ギロロは穏やかな表情で、たき火を見つめていた。
その横顔が、夏美にはふと大人びて見えた。
夏美は膝を抱え込んでつま先に視線を落とした。

「なんか、私ばっかり騒いで、子供みたい」
「急にどうした」
「ギロロが怒らないから」

訝しげに自分を見るギロロに、夏美は言う。

「もちろん、怒って欲しいわけじゃないけど。ひどい疑い方しちゃって、ギロロは怒って当然なのに」
「誤解されても仕方ない状況だったからな……信じて欲しかったが」
「ごめん」

夏美は座ったまま深々と頭を下げた。

「やめてくれ。謝られるのは好きじゃない」
「このままじゃ私が申し訳なさすぎるわ。ギロロ、何か私にして欲しいことない?私、何でもする」
「なっ、何でも?」

ギロロの声が上擦った。
ごまかすように咳ばらいをすると、夏美の肩に手を置いて、その目を見つめる。

「夏美……お前は時々無防備すぎる」
「え?なに?」

夏美は近距離で見つめられて初めて、ギロロの眼差しに熱を感じた。

心臓が、とくん、と小さく波打つ。

「お前は忘れているのかもしれんが、俺も大人の男なんだぞ。
 軽々しく、何でもする、なんて言うな」
「そういう意味じゃないわよ! それに、ギロロは私が本気で嫌なこと、させないでしょ……?」

夏美の声がとたんに細くなる。
ギロロはため息をついた。

「その言い方は卑怯だ。お前らしくもない」
「な、何よ」
「何でも……してくれるんだろう?」

ギロロに肩を押さえられ、見つめられた夏美は視線をからめとられて動けなかった。
顔の火照りも、ぼーっとする頭も、たき火の熱さのせいなのか、
それとも別の原因なのかわからなくなる。

「目を閉じろ」

低い声に命令され、恐る恐る目を閉じた。

「夏美……」

閉じた瞼に熱いものが近づいて来るのを感じて、夏美は更に瞳を強く閉じた。

しかし、しばらく経っても何も起きなかった。
夏美は堪えきれずに薄目を開ける。

目の前にあったのは、ほかほかに焼けた芋だった。

「食わないのか」

ギロロが焼き芋を火かき棒に刺して、夏美の顔に近づけていただけだった。

「もう!なんなのよ」

奪うように目の前の芋を取ると、その熱さに思わず取り落としてしまう。
ギロロはそれを古新聞に包み直して手渡した。

「俺の夕飯に付き合ってくれないか?それが今の俺からの望みだ」
「ギロロ…… うん!喜んで」

夏美は頬を染めてにっこりと笑った。

星空の下でのディナーは始まったばかり。
たき火の温かい灯に照らされた庭は、香ばしく甘い香と、幸せな空気に満たされていった。


■Detective G66:END

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