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■together

夏の午後。
テレビの再放送も見飽きて、夏美はテレビを消した。
弱運転のエアコンの低いうなりが部屋の静かさを引き立てる。

冬樹は西澤桃華に誘われて、博物館に出かけて行っていた。
緑色の物体は地下でガンプラでも作っているだろう。
いつも過剰なくらいにうるさい家なのに、こうして一人になると少し寂しかった。
そういえば、部屋に読みかけのマンガが置いてあったのを思い出して、ソファから立ち上がった。

二階の部屋に入り、マンガを手に取ったとき、外で大きな音がした。
何か大きな物が落ちたような、大きな音だった。窓の外を見れば、庭からわずかに煙が上がっている。

「なんなの……!?」

転げるように階段を駆け下りて、窓を開けて庭に出ると、そこには小さなクレーターができており、
中心には赤い体がうつ伏せに横たわっているのが見えた。

「ギロロ!?」
「な……つみ……逃げろ……」

ギロロはゆっくりと身を起こしながらも、立ち上がることができず、また仰向けに倒れた。
夏美はあわてて頭を抱えるようにその身体を抱き起こした。

「何があったのよ!?」
「敵性宇宙人との交戦中に……システムをクラックされ、武器の転送ができなくなってな……」
「よくわかんない!」
「ああ……とにかく、武器が無くなって自分で取りに来たんだが、途中で攻撃を喰らったんだ」
「撃ち落とされたってこと?敵は!?」
「こちらも反撃したが、撃墜はできていない……ここへもすぐに来るだろう。早く逃げるんだ……」

ギロロは歯を食いしばると、なんとか身を起こしてテントに這い入り、中の武器や弾薬を引きずり出した。
テントから出てみると、庭にはすでに夏美の姿は無かった。

「逃げてくれたか……」

ほっとしたのもつかの間、耳元で通信を報せる音が鳴る。

『ギロロ伍長!武器はゲットしたでありますか!?』
「ああ、大丈夫だ。これから反撃に出る」
『センパイ、さっき攻撃喰らったみてぇだが、くたばり損ねたか』
「余計なお世話だ、お前はシステムの復旧に集中しろ」
『ギロロ先輩、早く戻って来て欲しいですぅ~、敵の数多すぎだってんだよごるぁー!!』
『ギロロ殿、大丈夫でござるか』
「ええい、貴様らよってたかって!人の心配しとる場合か。さっさと片付けて戻るから待っとれ!」
『『了解!』』

仲間の声を聞いて、柄にも無く胸が熱くなる。
もう少し動けそうだ。
遠くに転がっていたフライングボードを広い上げ、レバーを軽く動かしてみると、ガリガリ言いながらもなんとか起動した。

「もう少し、持ってくれよ」

持てるだけの武器を持ってボードにまたがったが、この状態では武器の重量にボードが持たないかもしれない。
そう思い直して、いくつかの武器を外している時だった。

「見つけたぞ!」
「なに!?」

頭上から声が降ってきた。見上げれば、先ほど傷を負わせたはずの敵性宇宙人が空から銃を構えていた。
その銃口は確実にギロロを狙っている。しかも、その両脇には増援の敵が控えていた。

「くそっ……!」

とにかく浮上しようとレバーを倒した瞬間、ギロロの目の前を何かが横切った。

「間に合った!!」

明るい声と共に現れたのは、パワードスーツを身にまとった夏美だった。
その両脇に浮いていたシールドが瞬時に展開し、目の前の敵にビーム砲が浴びせられる。

「ぐっ……なんだこいつは」
「正体不明、識別unknownです」
「ここはとりあえず退くぞ!」

敵が完全に引き返したのを見て、夏美はギロロに飛びついた。

「ごめん、スイッチがなかなか見つからなくて。間に合ってよかったわ」
「夏美……お前、逃げていなかったのか」

目を丸くしたギロロに、夏美は飛び切り魅力的な笑顔で笑いかけた。

「あたしが逃げるわけないじゃない。地球最終防衛ラインなのよ」

あまりに自信たっぷりなその表情に、ギロロも思わず笑みがこぼれる。

「そうだったな、さすが俺の見込んだ女だ」
「あったりまえでしょ。さ、行くわよ」
「なに?」

夏美は空に向かって親指を指した。

「今引き返していったあいつら、撃退するんでしょ」
「しかし……お前も来るのか」
「あんたこそ、こんなボロボロになってまで行こうとしてるじゃない」
「……危険だぞ」

上目遣いに睨むギロロの両肩を掴んで、夏美はその両目をしっかり見つめた。

「どんなに言われたって、あたしは行くわ。だからあんたはたった一言、言ってくれればいいのよ。
 一緒に行くの?行かないの?」
「……来てくれるか。一緒に」
「もちろん!」

二人は強く頷きあって、共に空へ飛び立った。

「行くわよ、反撃開始ぃ!!」

高速で飛ぶ夏美を、ギロロは慌てて追いかける。
その頼もしい背中を見つめているだけで、既に勝利の予感は確信に変わっていた。


■together:END



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