■Slush


深夜に目覚めたギロロは、トイレを借りようと日向家の窓に手をかけ、
そこにぼんやりとした明かりが見えることに気がついた。
そっと窓を開くと、ダイニングテーブルに人影が揺れた。

「ギロちゃん」
「秋、か」

近付くと、アルコールの香りが鼻を付いた。

「酒臭いぞ」
「ホットワインよ。飲む?」
「俺がダメなのは知っているだろう」
「じゃ、とっておきのおいしい水を出すわ。ちょっと付き合ってよ」
「遠慮する。こうも酒臭いんじゃ、せっかくのうまい水が台なしだ」
「ケチねぇ」

唇を尖らせる秋を尻目に、ギロロはトイレへと向かった。



用を足して戻ると、秋がテーブルに突っ伏していた。近づいてみると、静かな寝息が聞こえる。

「風邪をひくぞ」
「う……ん」

肩に手をかけて揺すってみても、わずかに声が漏れるだけ。
ギロロは盛大にため息をついた。

「毛布を持ってきてやるから、せめてソファで寝ろ」
「ん……」

その手を引いて、椅子から引きずり下ろすと、床に落ちる前に体を入れて支えた。
酒臭い体を持ち上げ、ソファまで引きずる。
柔らかいものが背中に当たるのを感じて、汗が噴き出した。
やっとソファの前にたどり着くと、なんとかその体を引っ張り上げて、ソファに横たえた。

「全く、世話の焼ける……」

言いかけた瞬間、腕を強く引かれて、一瞬のうちに腕の中にしっかりと抱かれていた。

「おわっ!あ、秋!」

秋は目を閉じたまま、幸せそうに微笑んだ。

「あったかい……」
「抱きまくらじゃないんだぞ!」

ギロロが真っ赤な顔で怒鳴ると、秋は片目をぱっちり開けた。

「だって抱き心地いいんだもの。今晩、一晩だけ、抱きまくらとして私に雇われない?」
「ふざけるな!起きてたのか!」
「悪いようにはしないから。ねぇ……」
「いいかげんに……ん!」

言いかけたところで、秋の唇がギロロのそれを塞いだ。
熱っぽい唇はしっとりと柔らかく、アルコールの香りがする甘い唾液に濡れて、ギロロに強く吸い付いた。
ギロロはそれだけで酔っ払ったように、くらくらとして力が抜けてしまった。

何度も押し付けられては離れ、舌がギロロの唇をなぞるように辿ると、背筋からぞくっとするような快感が走った。

「感じちゃった?」

秋が愉しそうに笑う。
ギロロは慌てて唇を手で隠そうとしたが、秋に優しく腕を取られ、力の入らないまま頭上に押さえつけられてしまった。

「秋、やめろ……」
「まだキスしかしてないのに、そんなに色っぽい顔しちゃって……ゾクゾクするわ」
「秋!お前は酔っている。勢いでこんなことをするんじゃない」
「ギロちゃんは飲めないからわからないかもね」

秋はあいた方の手をギロロの頬に添えた。

「勢いじゃないの。お酒は大人の欲望をスムーズに引き出す、潤滑油なのよ」
「何を言っている!」
「このまま、お互い愉しみましょ」
「秋……んっ」

秋の手が頬を離れ、また唇が降りてきた。
舐めるような口づけから、さらに秋の舌がギロロの口腔に忍び入る。
舌の絡み合う感触と、アルコールたっぷりの秋の唾液で、ギロロの体に酔いが染み込んでいった。

いつのまにか秋の片手はギロロの足の間をさすっていた。

「ギロちゃんたちって、エッチはどうやってするの」
「エッチ、とは……んっ……なんだ」
「生・殖・行・為」

キスの合間に囁いているうちに、ギロロの股間から膨らみが現れ、自己主張し始めた。

「私たちと一緒なのね」
「あ、当たり前だ」
「それならよかった。『できる』のね」

秋はにっこり笑うと、頭上に固定していたギロロの手を放し、自らの頭を下のほうへ移動させた。
もはや抵抗する気がなかったギロロは、秋の頭が自分の下半身に近づけられるのを見て、慌てて逃げようと体を起こした。

「やめろっ」
「痛くしないから」

地球人のそれより一回り小さめなそれは、秋の口に易々と含まれた。

「……!」

とたんに口の中で質量が増す。くわえたまま舌で押し潰すように裏を舐めあげれば、びくんと跳ねて上あごを擦った。

「秋、やめてくれ、頼む……恥ずかしくて死にそうだ」

蚊の泣くような声で懇願されて、秋は顔を上げた。

「お口は初めてだった?」
「初めても何も!こんなやり方、聞いたことがない!」
「ケロン星って遅れてるのね……それともギロちゃんが知らないだけかしらね」
「ペコポン人は、変態ばかりだな」
「いろんなことに貪欲なだけよ」

秋はギロロに軽くキスすると、ソファに膝立ちになり、着ていた服を全て脱ぎ捨てた。
ギロロはその大振りな乳房に釘付けになった。

「私も気持ち良くして欲しいんだけど、だめかしら」
「……どうすれば良い」
「ここと、ここ」

秋の細い指が乳首と、足の間の茂みを指した。

「わかるでしょ。敏感なところなの」

ギロロは誘われるように乳房に触れると、軽く持ち上げるように支えながら先端を口に含んだ。

「強くしなくていいの……ゆっくりでいいのよ」

ギロロの舌は乳首の廻りをなぞり、先端を優しく撫でては覆うように吸い付く。
言われた通りに緩慢なその動きが、一つ一つの快感を秋にじっくりと伝えた。

「ギロちゃん、だめ、もう……」

秋はギロロの手を取ると、自分の足の付け根へと導いた。
奥へと進むギロロの指に、濡れた感触が絡み付く。

「どうすれば良いか、わかる?」

答える代わりに、ギロロは秋を押し倒した。

「本当にいいんだな」

静かな囁きは、欲望にかすれていた。
それを聞いた秋がふいに赤面する。
今まで子供扱いしていた相手が、成人男性であることに、突然気づいてしまったのだ。

「ちょっと待って、ギロちゃ……」
「待てん」

ギロロはぐっと腰を進め、秋を貫いた。
中が埋めつくされるような圧迫感が奥まで届いて、秋の背骨から脳へ快感が駆け抜けた。

「はぁっ…ギロ……ちゃ……!」
「くっ……動くぞっ」

ギロロは歯を食いしばって動き始めた。
始めは探るようだった動きが、次第にスピードを増していく。
奥の一番善いところをリズミカルに突かれて、秋が弓なりにのけぞると、白い喉があらわになった。
ギロロは伸びあがってそこにキスをし、そのまま舌を這わせて胸元まで下りてゆく。
奥を突き上げながら胸の先端を甘く噛んだ。

「は……ぁ……!」

ギロロを締め付ける秋の内壁が、よけいに強く絡み付いてきた。
さらに貪るように乳首を強く吸う。
下半身はわずかな抜き差しを繰り返し、それがさざ波のような快感を生んだ。
ギロロは秋の胸から顔を上げ、うめいた。

「あ、秋……」
「ギロちゃん、すごいわ……私、もう……」
「すまん、俺ももう堪えられそうにない。思い切りいく」

秋は不安げに下唇を噛むと、こくんと頷いた。
ギロロはその小さな腕で秋の腰のあたりをがっちりと掴んだ。
限界まで引き抜かれたギロロ自身が、弾丸のように打ち込まれる。

「か……はっ……」
「最後まで一気にいくぞ」

ガツガツと音がしそうなくらいに秋の中がえぐられる。
秋は頭の中が真っ白になり、何も考えられなくなっていた。

「あ、あ、あ……!」
「だめだ、来るっ!」

ギロロの動きが一際早くなった瞬間、秋の中で膨れ上がったそれは、びくびくと跳ねながら精を吐き出した。

「すまん!秋……」

慌てて腰を引こうとしたギロロの頭を、秋は両腕でしっかり抱えて胸の谷間に押し込んだ。

「むぐっ!」
「最高だったわ」

ギロロは柔らかな感触に包まれながら、息苦しさに意識が遠くなっていくのを感じていた。


■Slush:END




* あとがき *

表の拍手SS(ギロ夏)で書いたシチュエーションの秋ギロ&エロヴァージョン。

タイトル『Slush』は潤滑油、という意味で使いましたが、
『安っぽい感傷』『感傷的な話』とかいう意味合いで使われることもあるようで。
本文には書きませんでしたが、最初このお話は、夏美がどこか別のところへ嫁いだ後として書き始めたものでした。

ギロロの想いに気付いていた秋は、内心二人が結ばれることを願っていたが、それが叶わず。
仕事のあと、娘のいない家に帰ったが、火の消えたような空間に耐えられず、アルコールに逃げたところへ
傷心を抱えたギロロが現れた、というシチュエーション。
トイレに行くために起きてきた、なんて言いながら、ギロロも本当は眠れないだけだったりして。
ある意味で傷の舐め合いというか、そんな感じのイメージでした。

そんな雰囲気はかもし出さないまま書き上げてしまったので、そんなダークなことは一切考えず、
秋ママがギロちゃんを襲っちゃいました☆的に読んで頂けるお話なので(笑)
でも、裏を見に来る方は、そんな裏設定も好きかなー、と、なんとなく書いてみました。
タイトルには密かにそんな安っぽい感傷も込めて。

しかし、いま裏話を書いていて思いましたけど、私はつくづくギロ夏前提のお話しか書けないみたいですね。


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